トリウムレンズを測定器で確認してみました。(Carl Zeiss Jena編)
※測定に関する説明は「Radioactive Lenses」参照のこと。
自分がオールドレンズに興味を持ったきっかけは、ソニーのα7のリリース。
Contax Gシリーズを持っていたので、Contax Gのデジカメが販売されないかなー?って待ち望んでいたところ、「α7ならGレンズを使える」と知って、それまでのCANONからα7に乗り換えました。
そして、オールドレンズへの興味が加速したのは、eBayでゼブラのCarl Zeiss JenaのPancolarを買ったこと。
Carl Zeiss Jena Pancolar 50mm F1.8は、eBayで初めて見たとき、その見た目のカッコよさに「α7にこのレンズを付けたい!」とすぐにポチったレンズ。
Carl Zeiss Jenaって何のこと?と調べたら、東ドイツのCarl Zeissっていうそれまで知らなかった歴史があること、Pancolarは言うなればPlanarと比較されるような東側の代表的なレンズであること、西側Carl Zeissよりお財布に優しいことなどから、一気にゼブラ Jenaのファンになりました。
おまけに、ゼブラのPancolar 50mm には絞り羽根が6枚のフツーのレンズ(前期型)と8枚のトリウムレンズ(初期型)があり、トリウムはレンズの質を向上させると知ってしまったことから、トリウムレンズにも興味を持つようになったわけです。
ちなみにPancolar 50mm は1965-1970年ごろまで製造され、シリアル番号855万台あたりまでトリウムを使った初期型レンズ、853万番台からトリウムを使わない6枚の絞り羽根の前期型に設計変更されているようです。(シリアル番号が混在しているのは生産した工場が違うから?)
出品者のひとりごと・・
〓 Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Pancolar 50mm/f1.8 zebra《初期型》(M42)
によると、4群6枚のダブルガウス型で、4群全てがトリウムレンズとのこと。なんちゅー使い方してるんだ。ゼイタクか(笑)。
で、久しぶりにPancolar 50mm を防湿庫から取り出してみたのですが、あれ?幾分、黄変している?
というのも2016年1月ごろにオーバーホールに出してだいぶ黄色を落としてもらっていたはずなのに。
(左)UV照射前のPancolar (右)UV照射後のPancolar
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 19,100 | 16,600 | 389 | |||
TCS-172 | 5.46 | 5.40 | 0.54 | |||
GMC-320+ | ― | 1,754 | ― | ― | 11.4 | ― |
なんとなくリア側のレンズの方が線量高いと思っていたけど、フロントの方が若干高いのね。さすが、トリウム贅沢仕様のレンズです。
TGS-146B
フロントで19,100CPM。リアで16,600CPM。
TCS-172
フロントで5.46μSv/h、リアで5.40μSv/h。
ファインダーは、それぞれ389CPM、0.54μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■撮影■
2014年11月のチェンマイ。
他のトリウムレンズはさておき、Pancolar 50mmは35cmまで寄れるので、結構使い勝手があります。
■夜景■
黄変の影響はほとんど無さそうです。
オーバーホールして組み立てなおしてもらったのもあるけど、写りは満足。青山の看板の上あたりにゴーストが出てるけど、光の当たり具合かな?
Pancolar 50mm F1.8を手に入れて以降、そのスタイルに惚れてM42だけでなくExaktaの20mmや35mmのFlektogon、Schneider-Kreuznach、Isco-Gottingen、A Schacht Ulmのゼブラのレンズにも手を広げていったわけですが、その中で手に入れられないだろうと諦めていたのはPentacon Super用に生産されたPancolar 55mm F1.4 とPancolar 75mm F1.4。
55mmはeBayで20万以上。75mmはさらに販売数が少なくて、辛うじて写真のみで確認済。
eBayで高額のオールドレンズ買うのはリスクがあるので、あまり気にもしてなかったけど、浅草の老舗の中古カメラ店で委託販売品のPentacon Super+Pancolar 55mm F1.4 がeBayよりも抑えられた価格で売れ残っていているのを先日発見し、委託販売品なら大丈夫だろうと、最後のゼブラのつもりで購入。
55mmもトリウムレンズって知っていたけど、(委託販売品の写真も黄色かったものの、コーティングの可能性もありえるって思っていたけど)手に入れたレンズはこれまで見たことないほどガッツリ黄変。
ここまで黄色いってことは、それだけ放射線が強いんだろうか?(硝材に含有しているトリウムの量と経過時間はレンズの黄変に相関関係があるんではなかろうか?)
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 5,340 | 29,800 | 726 | |||
TCS-172 | 7.17 | 12.2 | 1.04 | |||
GMC-320+ | ― | 3,501 | ― | ― | 22.76 | ― |
うっひょー、さすがKing of Zebra。あれだけレンズ焼けしているだけあって、放射線がハンパねぇー。ファインダー越しでも1μSv/hとは。
12μSvということは、1年間で100mSvを越えるので(12*24*365=105.12mSv)、ちょっと危険な線量かも。ま、そんなことしないけど。
TGS-146B
フロントで5,300CPM。リアで29,800CPM。
TCS-172
フロントで7.17μSv/h、リアで12.2μSv/h。
ファインダーは、それぞれ726CPM、1.04μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■撮影■
UV除去するまでは(するかどうか考えてないけど)、モノクロ専用レンズかな。
■夜景■
これだけ黄変している分、レンズの明るさは失われているわけで、他のレンズでは撮れる夜景の被写体でも同じ設定で撮影できずに、絞りF8からF5.6 にして撮影。
ISOを200にしたら、F8で撮影できました。
どうでもいいけど、自分が目で見た夜景とは全く違います。
Pentacon Sixの中判 50mmレンズ。
単純にゼブラ繋がり、Flektogon繋がりというだけで中判レンズに手を出してみたものの、マウントアダプタを含めデカい。
絞りにちょっと問題がある個体で、絞りリングで絞っても、絞り羽根が動かない時があり(その場合は、絞りをガチャガチャ動かすか、レンズ裏側の絞りピンを押してやると動くようになる)&取り回しが億劫なので全く出番が無いレンズだったりします。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 90 | 4,350 | 89 | |||
TCS-172 | 0.14 | 0.90 | 0.14 | |||
GMC-320+ | ― | 382 | ― | ― | 2.84 | ― |
フロントの値はほぼバックグラウンドと同じで、リアについてもファインダーで覗いた場合は限りなくバックグラウンドに近い数値になります。
TGS-146B
フロントで90CPM。リアで4,350CPM。
TCS-172
フロントで0.14μSv/h、リアで0.90μSv/h。
ファインダーは、それぞれ90CPM、0.14μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■夜景■
Pentacon Six(6×6)で撮ると50mmレンズは35mm換算で27mmの画角。
でも、フルサイズで中判50mmのレンズを使っても50mmなんだよね。
ゼブラのFlektogon 50mm F4の前に販売されていたFlektogon 50mm F4。
Zebraではなく、シボ革なので見た目のインパクトは大きさのみ。
なぜ買っちゃったかというと、
① eBayにアップされていた写真で、ZebraよりPre ZebraのFlektogon 50mmの方が線量が高いらしいことを知る。
② Pre Zebraと言えどもほとんど使ってないFlektogon 50mmを買うより、同じPre ZebraのFlektogon 65mm F2.8 を買ってみる。(こちらも線量が期待できるかも)
③ Flektogon 65mmの線量を測定してみたものの、結局検出されなかったので、Pre Zebraの1Q Flektogon 50mmを買うことに。
ちなみに、eBayで使用されていた測定器、SOEKS 112を調べてみると、シンチレーションカウンターでなく、SBM20-1というGM管だったのね。
つまりこの測定器に表示されている線量当量率(μSv/h)もGM管の計測値(CPM)をSBM20-1の係数で割った数値を表示させているだけなので、正確な線量当量率(Sv/h)を表しているわけではない、ってことでした。
なお、1Qの意味についてCarl Zeiss Jenaの双眼鏡を詳しく説明しているサイトによると、当時の東ドイツで設立された品質製品検査局(DAMW)によって品質検査をパスした製品に1Qを刻印することができ、その期間は1年間だったとのこと。
カメラのレンズの場合同じことが言えるのか、つまり認定を受けた1年間の生産ロットすべてが1Qで、それ以外の期間は1Q無しだったのか、それともレンズの生産の過程で高品質となったものだけを認証を受けて1Qとして販売したのかは分かりません。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 31,500 | 5,230 | 223 | |||
TCS-172 | 13.1 | 1.67 | 0.32 | |||
GMC-320+ | 3,513 | ― | ― | 22.83 | ― | ― |
eBayの写真からフロント側の放射線が高いことは理解していたけど、想像以上に高くてびっくり。
ただし、リア側は高くないので、ファインダーで覗いた際の放射線は無視できるレベルです。
TGS-146B
フロントで31,500CPM。リアで5,230CPM。
TCS-172
フロントで13.1μSv/h、リアで1.67μSv/h。
ファインダーは、それぞれ220CPM、0.32μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■夜景■
Pancolar 55mmと同じくらいキョーレツなトリウムを使用しているのにも関わらず、レンズが黄変している感じが無いのはUV除去したから?