トリウムレンズを測定器で確認してみました。(その他編)
※測定に関する説明は「Radioactive Lenses」参照のこと。
FUJINON 50mm F1.4は1970年にフジカ初の一眼レフカメラ、Fujica ST701 のセットレンズとして販売されたもの。
出品者のひとりごと・・
によると、6群7枚の拡張ダブルガウス型で、そのうち、3群のレンズを除く5群6枚がトリウムレンズとのこと。
きっちり黄変しています。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 27,300 | 29,800 | 660 | |||
TCS-172 | 9.46 | 11.3 | 1.00 | |||
GMC-320+ | ― | 3,388 | ― | ― | 22.02 | ― |
フロント側もリア側もがっつりトリウムです。
TGS-146B
フロントで27,300CPM。リアで29,800CPM。
TCS-172
フロントで9.46μSv/h、リアで11.3μSv/h。
ファインダーは、それぞれ660CPM、1.00μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■撮影■
陽射しが入るととたんに黄色い世界になるけれど、曇りとか影の中であれば大丈夫そう。
開くとモワモワってしているけれど、絞るとカリカリに。
■夜景■
レンズの黄変の影響はあまり無さそうです。いや、あるかな・・・?あるな。
1972年に後継機、Fujica ST801に合わせてリリースされたレンズ。EBC(Electronic Beam Coating)と呼ばれる電子ビームを利用したマルチコート化(11層のコートで1面当たり0.2%以下の反射率を実現)されるとともに、銅鏡に開放測光のためツメがつきました。
こちらもFUJINON 50mm F1.4(初期型)と同じくらい黄変しています。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 28,200 | 28,900 | 669 | 9.40 | 11.3 | 0.96 |
TCS-172 | ||||||
GMC-320+ | ― | 3,169 | ― | ― | 20.6 | ― |
フロント側もリア側もがっつりトリウムです。FUJINON 50mm F1.4(初期型)と同じレンズ構成で違うのはコーティングと銅鏡のデザインだけかな?
TGS-146B
フロントで28,200CPM。リアで28,900CPM。
TCS-172
フロントで9.40μSv/h、リアで11.3μSv/h。
ファインダーは、それぞれ670CPM、0.96μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■夜景■
同じ被写体だけど、25秒で撮ったFUJINON 50mm F1.4(初期型)の方より30秒で撮ったEBC FUJINON 50mm F1.4(前期型)の方がちょっと暗い感じ。
Nikon Fマウントの35mm F1.4のレンズとしては最も古い世代のレンズ。(世界で始めて一眼レフ用レンズとして焦点距離35mm F1.4を実現、と説明しているサイトも)
ニコンではNIKKOR-N Auto 35mmとマルチコートのNIKKOR-N.C Auto 35mmがどうやら唯一のトリウムレンズのようです。
なお、元々はF1.4 からF22で設計されているけれど、自分のレンズはAi改造が施されているためF16までとなっています。
黄変しています。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 2,150 | 3,600 | 375 | |||
TCS-172 | 3.13 | 4.88 | 0.61 | |||
GMC-320+ | ― | 814 | ― | ― | 5.29 | ― |
黄変の割にはあまり強くない方です。
TGS-146B
フロントで2,150CPM。リアで3,600CPM。
TCS-172
フロントで3.13μSv/h、リアで4.88μSv/h。
ファインダーは、それぞれ370CPM、0.61μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■撮影■
被写体と比較すると全体的に黄色になりがちで、青味が足りなくなるけれど(特に空)、紫陽花に関していうと、フツーに撮ると青紫色がどぎつくなるのに、黄変しているレンズの場合は穏やかで自然な青紫になるのね。
■夜景■
黄変しているので、ちょっとオレンジ系。絞り羽根が7枚のせいか、光芒がすごく特徴的。鋭く尖がってます。
1973年に発売された一眼レフ「OM-1」用交換レンズとして登場。
「OMマニア」によると
かつて標準レンズといえば50mm F1.4が一般的だったのだが、当時の大口径ブームにより、各社は競ってF1.2の標準を開発しはじめた。しかし、当初50mmの焦点距離でF1.2を実現するのは技術的に難しかったようで、初期のF1.2レンズは、僅か長焦点の 55~58mmクラスになっていた。
OLYMPUSもその時流に合わせ開発したのがこのzuiko 55mm/f1.2だったようだ。
50mm近くにまでレンズの屈折率を上げ、かつ明るいレンズを作るために酸化トリウムを使ったと言われている。
とのこと。
なお、出品者のひとりごと・・
◎ OLYMPUS (オリンパス) OM-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 55mm/f1.2《前期型》(OM)
によると、光学系は6群7枚の拡張ウルトロン型構成で、第1群 (前玉) と第4群貼り合わせレンズの一部にトリウムを採用しているようです。
またこの前期型はモノコート、後期型からマルチコートに変更されたようです。
専門店でオーバーホール済を購入しましたが、UV照射で黄変を除去してないのか、それとも除去したものの再び黄変しつつあるのかわからないけど、とりあええずちょっと黄変。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 37,500 | 3,520 | 477 | |||
TCS-172 | 10.2 | 4.72 | 0.69 | |||
GMC-320+ | 3,495 | ― | ― | 22.72 | ― | ― |
これまでチェックした35mmのレンズはどれもリア側にトリウムを採用していたけれど、このレンズは予想を覆してフロント側により強いトリウムレンズを使っているのね。しかもぶっちぎり!
TGS-146B
フロントで37,500CPM。リアで3,520CPM。
TCS-172
フロントで10.2μSv/h、リアで4.72μSv/h。
ファインダーは、それぞれ470CPM、0.69μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
Pre ZebraのFlectogonもそうだけど、フロント側のトリウムに遠慮無しです。
■撮影■
「OMマニア」に
一般的にはシャープで固めな描写なOMズイコーにしては、このzuiko 55mm/f1.2は(珍しく)柔らかく綺麗なボケが魅力的な描写だ。
開放は「とろん」としたとても優しい描写だ。
との解説があるので、開放(f1.2)とF8くらいまで絞って撮ってみたけど
あれ?同じレンズで撮影してたっけ?ってくらい写り方が別物!(同じレンズです)
空の色は気になるものの、結構楽しいレンズかも。
参考までに、Photoshop前とPhotoshop後。
■夜景■
ちょっと黄色いレンズだけど、それほど影響しているように見えません。
角度によってはゴーストがでる感じです。
1970年発売の後期型−I、EEタイプ
出品者のひとりごと・・
によると、光学系は6群7枚の拡張ウルトロン型構成で、第1群 、第5群、第6群にトリウムを採用しているようです。
過去にUV除去したのか、ほとんど黄変していません。
凄く写りが気に入ったレンズだけど、出品者のひとりごと・・に書かれているように、絞り環の操作がガチガチと硬いクリック感になっており、いずれメンテナンスしよう。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 33,400 | 20,700 | 368 | |||
TCS-172 | 7.61 | 5.11 | 0.53 | |||
GMC-320+ | 2,601 | ― | ― | 16.91 | ― | ― |
海外でトリウムレンズを測定したWebサイトs58yによると、このレンズも結構線量が高い方のレンズって評価されていたとおり、トリウム遠慮なしです。
TGS-146B
フロントで33,400CPM。リアで20,700CPM。
TCS-172
フロントで7.61μSv/h、リアで5.11μSv/h。
ファインダーは、それぞれ370CPM、0.53μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
なお、Hexanon AR 57mm F1.2のレビューサイトにびっくりする数値の線量が掲載されていますが、
この測定に使用したGMC-600+はLND 7317というGM管を実装しており、GMC-320+と測定値を比較すると(Webサイトの表によると)約4~5倍の値になるみたいです。
測定対象が同じ「Uranium glass bead 1238U」や「Uranium ore 238U」かどうかは定かではありませんが、まあ同じモノでしょう。
Hexanon AR 57mm F1.2の場合、GMC-600+とGMC-320+で比較したら係数率で14.5倍、線量当量率で6.3倍の差があることがわかりましたが、(同じレンズでも7507131と7505295と製造番号的に2000番くらいの違いがあるけれど)まあ、こんなもんかな?
■撮影■
安定した写り。とても安心して撮影できる感じ。
■夜景■
光芒は6本ですごくシンプル。
1969年に発売された鷹の目ロッコール。
出品者のひとりごと・・
によると、光学系は5群7枚拡張ビオター/クセノン型。トリウムに関しては特に言及がありませんでした。
なお、MINOLTA製オールドレンズは俗に『緑のロッコール』とも呼ばれ、「MC ROKKOR」シリーズでは光学系内の2面 (前玉裏面と後玉裏面) のみに限定して『アクロマチックコーティング (AC)』が蒸着されているとのこと。
というものの、自分のレンズはどうやら前玉裏面に手を付けてしまったレンズらしく、レンズが薄くクモっているのが残念なポイント。いっそのこと、このクモリを取るためにオーバーホールしたほうが精神衛生的にすっきりするかも。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 900 | 4,720 | 457 | |||
TCS-172 | 1.13 | 7.02 | 0.72 | |||
GMC-320+ | ― | 1,341 | ― | ― | 8.72 | ― |
鷹の目とはいうものの、トリウムは控えめ。
レンズ見ても黄変している感じ無かったし。
TGS-146B
フロントで900CPM。リアで4,720CPM。
TCS-172
フロントで1.13μSv/h、リアで7.02μSv/h。
ファインダーは、それぞれ450CPM、0.72μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■夜景■
うーん、光芒のあたりがちょっと緑っぽく見えるのは気のせいか。それより真ん中あたりの空がちょっと青っぽくなってるのは、レンズがかなりの凸レンズだから?だったら仕方ないけど、もしかしたらレンズの薄曇りが関係しているのかちょっと気になるところ。