トリウムレンズを測定器で確認してみました。(Asahi Pentax編)
※測定に関する説明は「Radioactive Lenses」参照のこと。
Camerapedia WikiのRadioactive Lensesや「アトムレンズ」で検索すると、たくさんのAsahi Pentaxのレンズで放射線が検出されていることがわかります。
比較的安く買えるし、オールドレンズと言えどもしっかり写るので、トリウムレンズに限らずちょこちょこ集めています。しかも、24mm、28mm、35mmの純正角型フード、ちょっとカッコいいし。
持っているTakumarシリーズのレンズのうち、6本がトリウムレンズでした。
Pentax Forumsによると自分の製品番号の刻印(A-Mスイッチの裏側に記載)が43931なので、1967年から1971年にかけて造られた(model 2)のレンズ。
レンズが黄変しています。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 829 | 13,200 | 304 | |||
TCS-172 | 1.29 | 4.60 | 0.41 | |||
GMC-320+ | ― | 1,409 | ― | ― | 9.16 | ― |
リアが結構高め。
ちなみに13,000CPMは帰還困難区域から物品の持ち出し禁止となる値。
13,000CPMを超えた場合、除染して値を下げて持ち出すことになるけれど、タイヤや錆など除染しても値が下がらない場合は持ち出しができません。
まあレンズは除染しようにもできませんが、もし検査に引っかかったら説明が必要ですね。
TGS-146B
フロントで800CPM。リアで13,200CPM。
TCS-172
フロントで1.29μSv/h、リアで4.60μSv/h。
ファインダーは、それぞれ300CPM、0.41μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■撮影■
空の色がうーーーん、って感じ。
ひまわりの写真も夕立が来そうな気配の色だなー。(本当は晴れ。薄曇り)
■夜景■
α7RIIで夜景を撮ると黄変の影響で多少、黄色っぽくなっています。
Pentax ForumsによるとSuper-Multi-Coated Takumar 35mm F2は1種類(製品番号43932のみ)のみ。1971年以降の製造。
こちらもレンズが黄変しています。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 836 | 13,400 | 332 | |||
TCS-172 | 1.25 | 4.59 | 0.43 | |||
GMC-320+ | ― | 1,407 | ― | ― | 9.15 | ― |
Super-Takumarとほぼ同じ計測値。もしかしたら製造番号が1つ違いなので同じ硝材を使っているのかも。っちゅーか、Super-Takumar 35mm F2とSuper-Multi-Coated Takumar 35mm F2は、シングルコートかマルチコートの差だけ?
TGS-146B
フロントで800CPM。リアで13,400CPM。
TCS-172
フロントで1.25μSv/h、リアで4.59μSv/h。
ファインダーは、それぞれ300CPM、0.43μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■夜景■
このレンズも黄変の影響で多少、黄色っぽく写っています。
Super-Takumarと違って20秒で撮影しています。なお、F11(30秒)まで絞っても光芒などに顕著な差はありませんでした。
こうやって比較するとSuper-Takumarとの画質の差がほとんど見られず、単純にコーティングが単層(Super-Takumar)か、色鮮やかな7層のマルチコート(Super-Multi-Coated Takumar)だけの差かもしれないです。
Pentax ForumsによるとMacro-Takumar 50mm F4の製品番号は2種類あるみたいだけど、自分のレンズの筐体から製造番号のようなものが見つからず。
初代のマクロは等倍かつ絞りがプリセットのレンズ。
黄変の影響は見られません。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 1,270 | 1850 | 124 | |||
TCS-172 | 0.23 | 0.55 | 0.16 | |||
GMC-320+ | ― | 221 | ― | ― | 1.44 | ― |
このレンズは放射線がそれほど高くないみたいです。
っちゅーか、ファインダーを覗いた時の数値、東京のバックグラウンドの低いエリアで測定しているから線量があることか確認できるけど、帰還困難区域周辺の空間線量が高いエリアで測定したら確実にバックグラウンドに埋もれてしまうのね。
TGS-146B
フロントで1270CPM。リアで1850CPM。
TCS-172
フロントで0.23μSv/h、リアで0.55μSv/h。
ちゅーか、フロント側、GM管はフレームの外側からしか測定できないけど、シンチレーションの場合は、1.5cmくらい中に押し込んで測定(笑)。
ファインダーは、それぞれ120CPM、0.16μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■撮影■
せっかくなので等倍マクロ
開放とF16で撮って、鳳凰堂の本堂部分をリサイズせずに切り出してみると、開放だとピントが石段でさえも厳しい感じ。F16で撮るとビミョーにピントが甘くなっていつつも1階部分はなんとかピントが合って、2階部分がぼやけているの感じ。
お散歩で撮りマクロ。風による被写体ブレ、手ブレ(体ブレ)の中で等倍マクロはピンボケ量産するので数うちゃ当たる作戦。
場合によっては2線ボケがちょっと煩わしいのね。
■夜景■
このレンズもF8/20秒で撮影しましたが、F11/30秒で撮影すると、光芒がきれいな線になりました。また、右隅の高速道路上の看板の収差が改善されているのが確認できます。
ちなみにCamerapedia WikiのRadioactive Lensesによると「シリアル番号790115のレンズのリア側は約58 µSv/h」と記載されてたことから、秋葉原の中古レンズ店にあった70万番台のMacro-Takumarをお店のスタッフに許可をいただいてGMC-320+で測定したところ、やはり200CPMくらいでした。
あと70万番台のMacro-Takumarと300万台のMacro-Takumarでは、絞りのプリセットの環に数値が記載されている/されてないの違いがありました。(2種類ってこのことかな?)
なお、Pentax Forumsによると、Super-Multi-Coated Macro-Takumar(ハーフマクロ)もわずかながら線量が確認された、との投稿がありましたが、
S-M-C Takumar 50/4 embodies very slight radioactivity (significantly lower than S-M-C 50/1.4). This level of radioactivity indicates optical element made of lanthanum glass or optical element with very low concentration of thorium (250 nSv/h compared to 1670 nSv/h of S-M-C 50/1.4 – measured by rear element; local background is 120-180 nSv/h)
自分のSuper-Multi-Coated Macro-Takumarは、わずかどころか、まったくバックグラウンドと同じ線量でした。
Pentax Forumsによると、Super-Takumar 50mm F1.4は大きく前期モデル(6群8枚構成)と後期モデル(6群7枚構成)分かれており、自分の持っているレンズは、製品番号が37801なので、後期モデル(6群7枚構成)と言うことになります。※ebayやヤフオクでは6群8枚構成のレンズが希少性?からか、7枚構成より高値で取引されてるみたいだけど、まあ違いがわからないので安い方で十分かと。
また、Notesに記載の通り、被写界深度スケールの8と4の間にIRマーク(赤外線指標→前期モデルは4の右側)と絞りのF2の位置が白い○になっています。
なお、この6群7枚構成は、後に続くSuper-Multi-Coated Takumar 50mm F1.4へと受け継がれているようです。
このレンズも35mm F2ほどでもありませんが黄変しています。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 1,090 | 21,700 | 430 | |||
TCS-172 | 1.55 | 7.90 | 0.61 | |||
GMC-320+ | ― | 2,384 | ― | ― | 15.5 | ― |
自分が持っているTakumarシリーズでは線量が一番高い結果になりました。
35mm F2ほど黄色くないのは、過去に紫外線(UV)照射したからかも。
っちゅーか、リアで21,000CPMでもミラーレスをはさんでファインダーで覗くと400CPMまで落ちるのすごく減衰していることがわかります。
TGS-146B
フロントで1000CPM。リアで21,700CPM。
TCS-172
フロントで1.55μSv/h、リアで7.90μSv/h。
ファインダーは、それぞれ400CPM、0.61μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■撮影■
レンズが黄色いから?古いから?それともこれがこのレンズの設計?全体的にコントラストが落ちてる感じ。まあ、Photoshopでチョイチョイと引き締めれればいいだけのことだけど。
■夜景■
20秒で撮影。なお、F11(30秒)まで絞っても光芒などに顕著な差はありませんでした。
35mm F2の結果ほどでもありませんが、多少、黄変の影響が感じされます。
また、Macro-Takumar 50mm F4と比べると、同じ焦点距離のレンズだけどSuper-Takumar 50mm F1.4の方が若干画角が広く写っています。
Super-Takumar 55mm F1.8は、国内で熱心に研究されている方の資料によるとおそらくⅣ期型A、Pentax Forumsでも様々なバリエーションが紹介されていますが、自分のレンズはここで定義されている製造番号37101より後ろの37103なので後期型と判断でいいのでは?
このレンズは黄変の影響が見られません。
もしかしたら紫外線(UV)照射によって、除去したのかも。
ちなみに124万番台のSuper-Takumar 55mm F1.8(製造番号は)も持っていますが、そちらは非トリウムレンズでした。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 316 | 16,100 | 170 | |||
TCS-172 | 0.44 | 2.90 | 0.26 | |||
GMC-320+ | ― | 1,284 | ― | ― | 8.35 | ― |
TGS-146B
フロントで300CPM。リアで16,100CPM。
TCS-172
フロントで0.44μSv/h、リアで2.90μSv/h。
ファインダーは、それぞれ170CPM、0.26μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■夜景■
20秒で撮影。なお、F11まで絞るとSSが30秒になりますが、光芒などに顕著な差はありませんでした。
レンズが黄変していないので、フツーのレンズと同じ色合いで撮れています。
自分の持っているSuper-Multi-Coated Takumar 55mm F1.8の製造番号は37104なので、まさにSuper-Multi-Coated Takumar 55mm F1.8なんだろうけど、Pentax Forumsに記載されている製造番号37101はSuper-TakumarとSuper-Multi-Coated Takumarの両方に存在しているとのこと。
ちなみに国内で熱心に研究されている方の資料によると、Super-Takumar の製造番号37101の一部で7層マルチコーティングのレンズがあるらしいので、この辺りは明確な境界線が無いのかも。
このレンズは黄変の影響が見られません。
もしかしたら紫外線(UV)照射によって、除去したのかも。
■測定結果■
測定器 | 係数率(CPM) | 線量当量率(μSv/h) | ||||
Front | Rear | Finder | Front | Rear | Finder | |
TGS-146B | 312 | 16,500 | 160 | |||
TCS-172 | 0.48 | 2.86 | 0.24 | |||
GMC-320+ | ― | 1,327 | ― | ― | 8.63 | ― |
Super-Takumar 55mm F1.8とほぼ同じ。
こちらも35mm F2と同じように製造番号がお隣同士なので、同じ硝材を使っているのかも。
TGS-146B
フロントで300CPM。リアで16,500CPM。
TCS-172
フロントで0.48μSv/h、リアで2.86μSv/h。
ファインダーは、それぞれ160CPM、0.24μSv/hでした。
【参考】GMC-320+
■夜景■
20秒で撮影。なお、F11まで絞るとSSが30秒になりますが、光芒などに顕著な差はありませんでした。
ちなみにSuper-Takumarと比較すると写りはほぼ一緒。だけど右隅の高速道路上の看板の収差が改善されているので、多少違うのかも。(または単なるレンズの個体差か?)
後はもちろん、単純にコーティングが単層(Super-Takumar)か、色鮮やかな7層のマルチコート(Super-Multi-Coated Takumar)の差だけかもしれないです。