「ね、分るだろう」とロレンスは感きわまった低い声で言った。「はるかな古里で弟が兄のなかに蒔いた種子は、沢山の土地に植えつけられたんだよ。あのジャワの捕虜収容所にもね。そうなんだ、日本兵がセリエをあんなふうに殺したことだってね。実は知らず知らず、セリエの行為の孕んでいた種子に、気付いていたことを物語るものがある。生き埋めにしたことだって、そうだ。新しい若木のように、まっすぐ彼を地中に植えつけたんだからね。日本兵がセリエの行為を否認した、その否認の仕方そのものが実は、拒否されたもの、厳たる存在を認めていたことになるんだよ。その後、ヨノイの手で、日本の丘陵と霊のうえに植えられ、いまここでも、こうして、きみとぼくのなかに、その種子は生い育っているじゃないか。」

 

久しぶりに読んでみたくなった。
今週末にでも読みかえしてみよう。

影の獄にて

 

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